経理のコツ

経理処理には、手間やコストを省く、正確性を保つなどの観点で、色々なコツがあります。このコーナーでは、そのコツについて、どうしてそうした方が良いのかという理由と、効果を最大化する具体的な実行方法をお伝えします。

手形

東京の中小企業ではほとんど見かけなくなりましたが、約束手形という書面があります。お札より少し大きいサイズの紙で、金融機関で当座預金を開設している個人・法人が発行できるものです。発行者が、手形の券面に書かれた日付に、書かれた金額を支払うことを約束したものです。

その手形の持ち主は、金融機関にその手形を持ち込むと、券面に書かれた日付にその金額を受け取ることができます。ただし、手形は、手形交換所という場所を経由して交換手続きされるため、書かれた日付とはいっても、実際にそのお金を受け取れるのは2営業日くらい後になります。約束手形が金融機関に持ち込まれると、発行者の当座預金口座からその金額が引き落とされます。もし預金残高が少なくて引き落とせない場合は、「不渡り」といって、約束手形の持ち主はそのお金を受け取ることができません。これが頻発すると経済秩序が保てないため、不渡りを2回起こした発行者は銀行取引停止となり、事実上、銀行取引から締め出されてしまいます。

手形は譲渡可能です。発行者から直接受け取った人が、それを誰かに譲渡した場合、譲り受けた人が新しい持ち主になって、券面に書かれた金額を受け取る権利を持ちます。手形を譲渡するときは、手形の裏面に元の持ち主が記名捺印することになっています。これを手形の裏書といいます。裏書譲渡は何回も行うことができます。発行者がAさん、それを受け取ったBさんが裏書してCさんに手形を譲渡し、Cさんがさらに裏書きしてDさんに譲渡する、といった具合です。裏書は単なる譲渡の履歴ではなく、支払の責任を負うということでもあります。手形が不渡りになった場合、譲渡した人は、譲り受けた人に対して、その手形が不渡りになったときに、その券面の金額を支払う義務を負います。CさんはDさんに支払義務を負い、BさんはCさんに支払義務を負い、最後に発行者であるAさんがBさんに支払義務を負う、という仕組みです。

この仕組みを利用して、手形を受け取った人は、換金できる期日より前に、その手形を他人に譲渡して現金を手にすることができます。また、金融機関に、その手形を預けて、決済期日までの間、「割引料」という利息のようなものを払って、お金を借りることもできます。

発行者にとっては、お金を支払えない状況になってしまったときに、相手が顔なじみであれば、その手形を金融機関に持ち込むのを待ってもらうようにお願いすることも可能(承諾してもらえるかは別ですが)ですが、譲渡されて知らない人の手に渡ってしまうと、そういったお願いを聞き入れてもらえる可能性はほとんどなくなってしまうので、ある意味怖い決済手段ではあります。また、紛失したらどうするか、といった問題もあります。
こういった細々としたことを決めておく必要があるため、手形・小切手法という法律で色々なことが決められています。

小切手も似たような仕組みです。小切手の券面には、発行日が記載されますが、決済期日は記載されず、発行された即日有効となります。

両方とも、なくしたら大変な証券なので、扱いは慎重に行われます。営業マンが得意先の経理部まで手形を受け取りにいったり、書留で送ってもらったりすることが多いです。また、偽造を防ぐため、手形や小切手は、複雑な模様などが印刷された厚い用紙に、発行者が銀行届出印で捺印し、金額も、「一二三」ではなく「壱弍参」といった複雑な文字を使わなければいけないことになっています。こういった作業や手続きが色々と煩雑なので、最近では「電子決済債権」(略称: でんさい)という電子的なものが代わりに使われるようになっています。

そして、いよいよ、2027年に、紙の手形・小切手が廃止されることになりました。

大企業と取引すると、今でも手形やでんさいでの支払をされることがありますが、交渉すると、振込での支払に応じてくれることもありますので、手形・小切手の煩雑さを避けたい方は、ぜひチャレンジしてみましょう。
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