経理のコツ

経理処理には、手間やコストを省く、正確性を保つなどの観点で、色々なコツがあります。このコーナーでは、そのコツについて、どうしてそうした方が良いのかという理由と、効果を最大化する具体的な実行方法をお伝えします。

現金をなくそう

現金が合わなくて困ったことはありませんか?

現金の管理というのは、経理の永遠の課題です。きちんと現金出納帳をつけて残高のチェックをしていても、ときどき残高が合わないことがあります。一回一回のお金の出し入れとその記録を人手で行わざるを得ないため、どうしてもミスが出てしまうのです。このため、合わせることを諦めてしまって、現金出納帳は作成していても残高の計算をしていなかったり、現金出納帳自体を作成しない会社もたくさんあります。少人数の会社で、会社の現金が社長の財布と一緒になっているケースもたくさん見受けられます。そうなると、期末になって帳簿上の現金残高が何百万円にもなっていたり、逆にマイナスになっていたりといった現象が当たり前のように起こります。大抵の場合は社長との貸借で処理してしまうのですが、それができないケースなどもあり、なかなか大変です。

このように面倒な現金管理を簡単に行う方法があります。それは簡単で、なるべく現金を持たないようにすることです。現金を持たないための方法の一つ一つは非常に簡単です。
お客様からの集金を全て振込にしてもらう
経費は全て振込で払う
給与・アルバイト代は全て振込で払う
立替精算は振込で行う
社長や役員とのお金の貸し借りは全て振込で行う
どうしても現金で入出金しなければならない場合は、ぴったりの金額を口座に出し入れする
お客様からの集金を現金で行うというのは、集金する人の時間まで考えると、非常に効率の悪いことです。お店などで現金払いが基本の場合はどうしようもありませんが、そうでなければ、お客様宛に請求書をお送りして振込で支払ってもらえるようにお願いしましょう。

経費の支払も同様です。どうしても現金で支払う必要のある経費など、そうはありません。振込手数料はかかりますが、現金管理の手間に比べれば安いものですし、振込手数料を相手負担と考えて、支払金額から振込手数料分を引いて振り込んでいる会社もたくさんあります。中には、自動引落がきく場合もあります。

給与・アルバイト代の支払いも、現金ではなく振込にするのがベターです。現金で給与を支払う場合、各従業員から領収証をもらうか、給与明細の控えに受領印を押してもらうなどして、支払ったという事実を書面に残しておく必要がありますが、振込の場合は通帳などで支払ったことが証明できるので、こういった手間も不要です。また、退職した従業員に給料を取りに来させたり、もらったばかりの給料を紛失するなどといった面倒や事故も起こりません。どうしても振込手数料が惜しい場合は、会社の口座があるのと同じ銀行・同じ支店に全従業員の口座を作ってそこに振り込めば、手数料は安くなります。支払い方法が窓口、ATM、インターネットバンキングのどれかによっても若干違いますが、ほとんどの銀行では同一支店内の振込は手数料ゼロです。また、給与振込サービスを使うと、振込件数が増えても振込手数料は一定金額ですんだり、割引になったりします。

現金取引の削減に最も効果のあるのが立替精算です。各従業員が、自分の使った経費の領収証を提出して、引き替えに現金をもらうというのが立替精算の基本ですが、これを振込に切り替えます。従業員には領収証と一緒に立替精算表を書いて提出してもらい、その中で精算が必要な合計金額を明確に計算しておきます。経理担当者は、その内容をチェックして振り込むだけです。給与と一緒に振り込めば、余分な振込手数料もかかりません。Excel等の表計算ソフトを使って立替精算表を作れば、合計金額は自動計算できます。項目別に記入欄を振り分けておけば、その後の経理処理も簡単にできます。

現金出納帳があっても最も記録を忘れやすいのが、社長や役員とのお金の貸し借りです。本来は金銭消費貸借契約書や領収証が必要なのですが、ついつい「わかっているからいいや」と考えて省略してしまいがちです。しかし、小さな金額であれば1年も経つうちに忘れてしまいますし、記録しないということは、万が一、不正や盗難があってもわかりません。会社にとって最大の利害関係者なだけに、後日のトラブルを避けるため、その取引は明朗にしておく必要があります。

こうした方法で現金取引をなるべく減らしても、それでも現金の取引がどうしても残ってしまう場合があります。私が知っている例では、外国人の従業員で、国内の銀行に口座が作れない人を雇っていたり、お得意先が振込手数料を惜しんでどうしても現金集金を変えないようなケースがあります。こうした場合、支払う金額ピッタリを口座からおろしたり、集金したお金をすぐに口座に入れてしまうことで、手元の現金をすぐにゼロに戻すことができます。

現金管理は、その都度記録とチェックを必要とする、経理の中でも最も根気と持続力のいる仕事です。しかも、それがきちんとできていても、トラブルの防止にはなりますが、利益にはつながりません。その原因を元から絶ってしまうことで、余計な手間を減らし、他の仕事に集中することができます。振込手数料がかかっても、その効果に比べれば安いものです。

お店など、現金取引を行わざるを得ないところでは、釣り銭用に毎日一定額をレジに残し、残りを口座に預け入れることで毎日の現金残高のチェックを自動的に行うことができます。こういった方法も代替手段としては有効でしょう。

今日のポイント

・現金管理という余計な手間は元から絶つ
・振込手数料は現金管理の煩雑さから逃れるためには必要な経費
・手数料を削減する方法も同時に併用することができる
・現金を必ず扱うお店でも、現金管理をある程度簡単にする方法はある
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