あまり良いイメージではありませんね。使途が決まっていないお金や経費の先払いなどのときに使われる勘定科目なので、不透明な経理の印象があり、あまり大きな金額が財務諸表に載っていると、銀行から嫌がられます。
しかし、仮払金の本来の目的は違います。出張などの大きな出費があるときに、立替の負担を少なくするために社員などに先にお金を払うことです。これをうまく使うことで、会社で現金を扱う必要がなくなります。
経理をラクにするためには、現金を持たないことだと言い続けてきましたが、現金を持たないようにするには、現金を必要とする取引をどのようにするかが課題となります。毎月取引する取引先とは、自動引落や振込を活用することで現金で支払う必要がなくなります。日常の小さな経費は社員に立替精算をさせれば大丈夫です。大企業では当たり前のように行われていることです。立替精算で社員に支払うときも振込にしてしまえば、小口現金もいらなくなります。
しかし、ここで発生する問題があります。ただでさえ給料の高くない中小企業で、社員に大きな金額の経費を立て替えさせてしまうと、その社員の家計を圧迫する結果になって反発を招きます。その対策に使えるのが仮払金なのです。社員の経費立替は、だいたい毎月同じくらいの金額になるものです。その負担をなくすため、あらかじめ同じくらいの金額を社員に仮払いしておき、精算日に精算すれば社員の立替負担はほとんどなくなります。
精算方法も、仮払金をゼロに戻すような精算ではなく、仮払金として最初に渡した金額まで戻るように、差額を補充すればよいのです。こうすることによって、毎月恒常的に仮払いをしていることになり、社員は立替の負担がなく、仮払精算の業務も普通の立替精算と同じくらい簡単にすませることができます。
仮払いした金額を社員が精算日より前に使い切ってしまった場合には、臨時で精算したり、追加で仮払いを出したりすれば対応できます。また、仮払いする金額は給料と比べて高い金額ではないため、持ち逃げなどのリスクは、支払う給料と相殺することによって回避できます。
そうはいっても決算書に載ると見栄えが悪いのは確かですので、大きな金額の仮払金が載るのを防ぐために、期末日でいったん精算して仮払金の金額をゼロに戻したり、仮払金を持たせる社員を少数に限定して金額が膨らむのを防ぐなどの対応策も必要でしょう。
また、この方式の弱点ば、仮払いした金額を社員がまるで自分のもののように思ってしまうことです。決算や退職時など、一定のサイクルで返金するということを周知しておくことで、この勘違いを防がなければなりません。
今日のポイント
・仮払金の活用で社員の経費立替の負担を軽減できる
・差額を補充して常に仮払金の金額を一定に保つことで、立替精算の事務も簡単になる
・精算日前の使い切りや持ち逃げのリスクには細かいルールで対応できる
・決算時の見栄え対策は必要
・社員の勘違いを防ぐための周知は必要